頚椎症性神経根症 Case1

今回は頸椎の症例のお話です!

頸椎は単独で症状が出てくることもあれば、肩や胸郭などの他関節の影響も受けていることも多く、治療には苦労する印象があります。

今回の症例も頸椎自体と胸郭の影響を受けていた方のお話です。

さらに近年問題になっている(注目されるようになってきている)心理社会的な側面にも関係している方でしたのでまとめてみました!

Patient proile

・40代後半 男性

・仕事:製造業 下を向いて機械を操作することが多く、PC作業もある

・骨格がしっかりしていて(太っているわけではない)、奇抜な髪形をしている

・穏やかな性格で、会話から性格の良さが分かる

・リハ室内に案内する段階から頭部を正面で固定し、顔が真正面を向く姿勢以外を取りたくなさそうにしている

・リハビリ開始の3か月くらい前から出現し、じょじょに増悪している。頭痛と眩暈もあったが無視して仕事をしたところ、耐え難くなったため当院を受診してきた。

・実の母親が認知症であり、一人で介護をしている。状態は悪く夜中の徘徊や昼間の危険行動がみられ、目が離せなくなってきた。

・今回の疼痛が出現し始めたあたりから不眠気味であり、連続睡眠時間は一時間程度で、一日合計で4時間眠れているか分からない

・そのため、リハ開始と同時に1か月の休職をすることになった

自覚的評価

・疼痛箇所:C2-6くらいまでの広範囲 肩甲骨のまわり全体的

・NRS:1~2が持続 動作時には8まで増強

・深いところが痛い感じ

・持続的で、痛みから逃れることはできない

・頚部を掴まれたような痛み 肩まわりは突っ張るような痛み

・24時間動態:寝起きが最も酷い

・疼痛増強因子:車の運転を数分続けたとき、横を振り向いた時、スマホや作業で下向きをキープした後

・疼痛軽減因子:仰向けに寝ているときが比較的に楽

理学療法所見

・スパーリングテストなど神経学的所見はなし、上肢への放散痛なし

・頸椎の自動運動は全方位性に疼痛性制限あり 特に屈曲と左回旋

・頭痛、眩暈はリハ室で出現せず

・頸椎に対して副運動を誘導しながら各自動運動を行うと一時的ではあるが疼痛は軽減し、可動域は改善する

・肩まわりの緊張を緩めると頸椎の動きも向上する

・考察

今回の症例は、体幹と頚部を固定したかのように行動するのが特徴的でした

事務作業、デスクワークの方に多いのですが、同一姿勢で数時間作業していると各関節や筋、皮膚などの滑走性が非常に悪くなります。そして肩こりや背中の張りなどの症状が出現してきます。

この状態で日常生活の動作を行っていくと、肩甲上腕関節や頸椎のように比較的可動範囲が広い関節に動作を押し付けるしかない状態になります

こうすることでその関節に負担がかかり、肩関節周囲炎や頚椎症などの頚部疾患になりやすくなると思われます

そのため、治療としては長時間作業で可動性が落ちてしまった組織(皮膚や筋など)、胸郭自体、そして肩甲胸郭関節の可動性を改善させることを第一にします。

さらに今回は、不眠と介護疲れという問題がありました。不眠はもしかしたら介護疲れからきているかもしれませんが…

そのため、不眠やストレスが人間に与える影響を説明し、自分の意志でその状態から脱却できるようにしていくことも必要であると考えました。

治療と結果

day1

・僧帽筋上部繊維、肩甲挙筋、菱形筋などの滑走不全を起こした筋に対してのリリース

・骨盤後傾位、頭部前方変位、胸腰椎後弯の不良姿勢の修正とADL上での指導

・良姿勢状態での肩甲胸郭の自動運動の指導

・介護に対するアドバイス(介護保険系の紹介と誘導)

・心理社会的に痛みが助長されることの説明

以上を行いました。徒手療法を実施しながらアドバイスや説明を同時に行っていきます。

しかし介護を行っている人はわざわざ言われなくてもすでに調べていたり試した後であることが多いのも事実です。

今回もある程度の知識を持ち、やれることはやった後でした。初回のため話を聞くことをメインにし、心理社会的な疼痛の説明に時間を使った形にしました。

Day2

・安静痛が軽減し、気にならなくなった

・1時間くらい運転する機会があったが痛みが出なかった

・自動運動では左回旋と屈曲に制限が残っているが、それ以外は可能になった

・不眠はまだ変わっていない

状態は上記のように変化があったとのことです。そのため治療を少し変更しました。

・リリースは継続

・傾聴しながら介護負担軽減のアドバイスになることはないか探す

・広範囲な頚部の痛みから動作時の限局した痛みに変化→副運動制限による痛みと考えモビライゼーションを開始。MWMsを追加

・モビライゼーションのセルフ化→タオルによるSNAGsを指導

Day2の治療後に全方位への自動運動痛が消失し、頭部のみで辺りを自然に見渡す様子がみられました。

不眠と介護負担に関してはこの場での変化は確認できていません。

不眠、鬱傾向が健康に及ぼす影響については説明を行い、理解と本人が努力することを納得されました。

しかし、これは今後の課題になりそうです。

今回は頸椎の症例でした。

大本は仕事とスマホで下を向いた姿勢を続けたことによる頸椎の副運動障害による関節機能障害と思わます。

そのまま痛みにより不動状態となったため、副運動障害を上塗りするように滑走不全による障害が出ていたものと思われます。

これによる痛みは2回の治療でだいたいが改善したと思います。

残りの家庭環境による問題、睡眠障害に関しては本人と各種サービスの協力なしでは解決できない問題かもしれません。

介護保険の知識はある程度持っていますので(3年ほどデイサービスに勤務した経緯がある)、睡眠や栄養など現代社会で問題になりやすいことに対しても知識を深めていきたいと思った症例でした。

今回は長くなりましたが最後までお付き合いいただきありがとうございました!

また次の症例でお会いしましょう!

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