腸脛靭帯炎 Case1

  • 投稿カテゴリー:膝疾患

今回は腸脛靭帯炎の症例になります。

いわゆるOver useによる疾患で、特に単純な膝の屈曲伸展を繰り返すようなランナーに多い症状になります。

今回の症例もマラソンを趣味にしている患者様で、典型的な症例だったなと思っています。

それでは私の考えをまとめていきます!

Patient proile

・診断名:左腸脛靭帯炎

・40代前半 男性

・身長はやや小柄であり、一般体型。普段はデスクワーク主体の仕事についている。

・市民ランナーで6年前に突然走ることの快感に目覚めた

・多いときで日に20~40㎞走ることもあった

・非常にストイックでまじめであり、「自分の足で頑張るからいいのであって、テーピングやインソールに頼るのは違う」とのこと

・「記録を超えていくのが快感です!」と笑顔で話し、走ることが楽しいというよりもチャレンジ精神の現れといった印象

受診までの流れ

2年前から腸脛靭帯に違和感を感じていたが、休息を挟むと改善していたため放置していた。3か月前に急性増悪し、3㎞のジョギングが限界の状態になったため当院を受診。

受診からリハビリまでに1週間空き、その間はストレッチをしながら3㎞以下/日まで運動量を減らしたことで改善傾向にあった。最近は5㎞まで延ばせている。

自覚的評価

疼痛尺度:ちょうどいい答えが得られず

疼痛の種類:腸脛靭帯の外顆上に限局した痛み

疼痛増悪因子:ジョギングの速度で3㎞走る、ジョグよりも高速で5㎞走る

疼痛軽減因子:遅い速度よりは速いほうが疼痛の出現が遅くなる ADLで痛みなし

理学療法評価

・やや内反膝を呈しているが、極端ではない

・グラスピングテスト:陽性

・オーバーテスト:陽性

・左腸脛靭帯は右に比べて緊張が非常に高い

・左足関節に反復性の捻挫の既往あり ROM著明に低下

・足底の胼胝は、小趾の先端、第2,3趾中足骨頭部

・片脚立位:左支持では対側骨盤の降下と不安定性がみられる

・歩容:左Mst~で重心の外方変移が強まり、下腿外転・対側骨盤降下・股関節内点内旋位と内反膝が強まった状態となる

試行的治療

・大腿筋膜張筋に対して、短縮位から筋収縮を繰り返して行わせ緊張を緩和させてみる

→自覚的にも他覚的にも、片脚立位の安定性が改善し歩行中の重心外側移動が減少している

結果

片脚立位の安定性が増し、歩行、ジョグの重心変移が正常化した。また、自覚的にも安定感と歩行・走行の状態が改善したと感じてもらえた。

治療

・筋膜張筋に対して同様の操作を加えた後に他動的なストレッチを3セット行った

・自主トレとして、同様の筋膜張筋に対する操作を教え、その後に筋膜張筋のストレッチを行うように指導した。

・大殿筋、中殿筋後部繊維のアイソレーショントレーニングを指導した

考察

最近の患者さんに共通して言えることですが、WebやSNSを利用して知識を取り入れた状態でリハビリに来る方が多いです。

この症例も同じで、腸脛靭帯炎についてかなり知識をつけた状態で来院してきました。

しかしそれらで紹介されている方法ではなかなか改善しなかったようです。

一説によると腸脛靭帯炎は腸脛靭帯実質の炎症というよりも外側上顆と腸脛靭帯の間にある脂肪体の炎症であるとも言われています。

脂肪体で有名なものと言えば膝蓋脂肪体で、膝にある組織では最も強い痛みを出しやすいと言われています。腸脛靭帯炎も脂肪体の痛みだと考えれば、走ることもできない強烈な痛みも納得できます。

この方は受診してくるまでストレッチとは無縁のランニングライフを送っており、体のケアには興味がなかったとのことです。

負担のかかっていた筋は伸張性が低下しており、通常のストレッチのみを行っていても効果が薄い状態であったと思われます。

こういう時は一度自己抑制を使ったり、ダイレクトストレッチを行って筋を緩めた後にストレッチを行わせたほうが効果が高いと思っています。

また、歩行時に股関節の内旋・内転位を呈していたことで大殿筋や中殿筋後部繊維は使われにくい環境が成立していたものと思われます。実際に筋出力が低下していました。

ストレッチで筋が使える環境を整えて、それから刺激入れのために立位でアイソレーショントレーニングを指導しました。

頑張りすぎる傾向にあるため、自主トレはすべて回数制限と強さの制限も付けました。

また、復帰の際に段階的に上げていけるように、走行の速度と距離の調整についてもアドレスをしておきました。

遠方からいらした方であったため、定期的なチェックが難しかったため自主トレメインに指導内容になった症例です。

1か月後に確認のリハビリをお取りしているため効果判定やいかに…

追記

私は最近、入谷式インソールに興味を持っています。講習会にも参加していくつもりでいます。

また、当院にはもともとインソール屋兼靴屋の業者さんが入っており、この方の元で勉強させて頂しています。

そんなこともあって今回の症例にはインソールがピッタリだと頭では思っていたのですが、やはり紹介しても食いつきは良くなかったため諦めました。(笑)

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